第18章 ◆柴田ノ恋
「あのお方って洞窟にいた、
眠ってる妖のこと?」
道路を渡ってから足を止めた公園。
先程の揺れが嘘みたいに無くなった事で
三人は段差になった花壇へ腰掛けた。
そして、
さなの腕の中で
ガタガタと震え続ける亀妖と視線を合わせて
さなが問い掛けた。
「ひゅううぅ、あの、あのお方が、
ち、近くまで・・・ぅっ。。」
さなの問い掛けにも答えるどころか
何も聞こえなかったのか
全く違う話を持ち出し
言い切らないうちに
さなの腕の中でパタリと倒れてしまった。
「「「・・・。」」」
急な事で数秒の沈黙が流れる。
そんな三人が顔を見合わせ
冷や汗を一筋流した。
「ちょっと、っ」
「お、おい・・・」
同じタイミングで亀妖へ声を掛けたのは
さなと夏目だった。
どれほど揺らして起こそうにも
気を失っているらしくピクリともしない。
洞窟の件やさなを連れ去った事も含め
唯一何かを知っている肝心な妖だ。
こんなところで寝られては話が進まない。
「頼む、起きてくれ。」
懇願するように夏目が優しく揺さぶるが、
「・・・起きません。」
さなの腕の中で
眠っているように健やかな表情で
全く動かない亀妖。
そして、この状況に対しても
動けなくなってしまった三人。
亀妖を放ってここで帰るには
気が引けてしまうし
事が終わらなければまた
さなが狙われてしまう可能性が高い。
「参ったな」
夏目が立ち上がり頭をかいた時、
「仕方無い、もっぺん行ってみるか。」
隣にいた柴田も立ち上がり
爽やかフェイスでニコリと提案した。
「・・・?」
「柴田、それ本気で言っているのか?」
瞬きを複数回して
柴田をポカンと見上げるさなの隣で
夏目が聞き返した。
「あぁ、本気だ。
俺は妖退治に来た訳じゃないからな。
だからって、
放っておく訳にもいかないんだろ?
それなら早く片付けてしまおうぜ。
そしたら、さっきの続きだ。」