第18章 ◆柴田ノ恋
「大丈夫か?」
そっと手を取り前を歩く夏目が
さなへ振り返り尋ねた。
「はいっ。」
一瞬驚いた表情を見せながら
すぐに小さく笑顔を作って頷く
そんなさなの姿は
土まみれの制服で、所々体にも傷がついていて
一体何があったのか
今すぐにでも聞き出したいのに
精一杯作った笑顔と返事に
聞き出せず、ただその手を掴んでいた。
ー・・・二度と離さない。
少しだけ力を入れて前を向き
夏目は急いで山を下るのだった。
「いつまで続くんだよこの地震。」
只管山を下っていた脚が悲鳴をあげる柴田は
とうとう、その揺れにさえ文句を零した。
「分からない、
山頂付近に嫌な気がするから
出来るだけ離れたいんだ。
すまないが、柴田・・・」
「あぁ、振り向かずに降りればいいんだろ?」
ちょっと愚痴りたかっただけだ。
そう前を向きながら零す柴田の言葉は
振り返らずとも分かる、
夏目を信頼するものだった。
そうして見える
夏目と柴田には見覚えのある麓。
今し方登ったばかりの入口である。
少し段差になっている土を避けて外へ出れば
コンクリートの道路が走っていた。
さなは夏目に手を引かれるがまま
足早に近くの公園へと向かった。
「あ、あ、、、、あのお方が、、、、、!」
さなの腕の中で震える亀妖が
ずっと呟いているのを聴きながら。