第18章 ◆柴田ノ恋
時折、カクンっと膝が折れても
何とか踏ん張り山の斜面を下るさなと亀妖。
(正確にはさなに抱かれている亀妖。)
揺れる地面で、しかも険しい山道を下るのは
そう容易くはなく
何度かその場に崩れながら
ゆっくり降りていくと
勾配の軽い木々の少ない場所へと出て
さなは少し安堵した。
「 ここなら大丈夫かも、
ここで揺れが収まるの少し待とう。」
さなは息切れながら
未だ揺れる地面に腰を下ろし
辺りを確認してから
亀妖も目の前に下ろした。
「 まさか、・・・そんな・・・」
震えているのか、
地面が揺れているからなのか、
亀妖は今下った斜面を見上げながら
冷や汗をひとつ流した。
「 さっきから、どうしちゃったの?
亀さん。」
先程とは明らかに様子の異なった亀妖を見て
さなは心配そうに問い掛ける。
「 め、・・・目覚めたかもしれねぇ・・・。
あのお方が・・・!」
「 あのお方って・・・、
さっき言ってた起こしちゃ駄目な人?」
やっと言葉を発した亀妖に
さなは間髪入れずに問いかけた。
すると、亀妖はゆっくりと
さなに振り返って
これまたゆっくりと頷いた。
その瞬間、
ゴゴゴ、と唸るように地鳴りがした後
突風が二人を襲った。
「 ぬぁっ!」
さなの手乗りサイズ程しかない亀妖は
突風により舞い上がってしまう。
「 っ、亀さん!」
さなが手を伸ばして亀妖の体を掴もうとするも
さな自身も揺れる地面にバランスを崩し、
そこを亀妖が飛ばされた方向とは真逆に
突風によって吹き飛ばされてしまった。
「 ひゃっ、!」
一瞬呼吸が出来なくなる、
そんな突風の中
閉じてしまった目を薄く空け
遠くまで飛ばされてしまった亀妖へ
届くはずもない手を伸ばしたさな。
「 亀さ、ん!」
そこに、サッと現れる黒い影が
小さく映る亀妖をそっと包んだ。
「 え・・・っ」
その光景にさなは思わず目を見開いた。