第18章 ◆柴田ノ恋
「 ちょ、ちょっと待って・・・!」
「 うるせぇ!
さっさと引きな
ここは人間の小娘が来るような
場所じゃねーんだ!
危険も危険、
かーなーり、きっけんなんだぞ!」
さなが少し静止の言葉を口にしただけで
5倍もの文句が返って来る中、
ズルズルと背中を押されて
気付けば木漏れ日の明るい外へと
押し出されていた。
引き摺られたお陰で
細かな砂埃がさなの体を占めていて
亀妖が動きを止めた途端に
その一部が舞い上がり
さなは思わず咳き込んだ。
「 よぉし、ここまで来たら大丈夫だ。
ほら、さっさと帰るこった小娘。
あの方が起きちまったら
俺たちはもう・・・」
亀妖がそこまで言いかけたその時だった。
ググ、グ・・・
「 ・・・?」
「 ・・・!!」
小さな地鳴りがした後に揺れる地面。
地震か?と辺りを見渡すさなの横で
亀妖はまさか、と顔面を蒼白にさせて
小刻みに震えた。
「 地震、?
どこか避難しないと。」
グラグラと揺れる地面で
上手く立つことも出来ないまま
ふらふらと揺れながら
何とかバランスを保ちその場に立つさなが
隣の亀妖を見て頭を傾げた。
「 どうしたの?」
声をかけても
亀妖は今さっき出て来た暗闇の方へ視線を向け
口をあんぐりと開けたまま固まっている。
「 避難しないと、危ないよ。
周りの木が折れちゃったら・・・」
そう言ってさなは
立派に聳え立つ木々を見上げた。
ミシミシと嫌な音を立てながら揺れる木々は
先端にかけて撓り
いつ折れてもおかしくはない。
「 逃げなきゃ、ここに居たら危険。
ほらっ。」
地鳴りも響き、揺れも収まらない中
さなが何を言っても無反応になった亀妖に
痺れを切らせてその小さい体ごと抱き上げると
さなはその場から下るように
斜面を駆け下りた。
その背後を
真っ白な大きな手が掠っていた事も気付かずに。