第18章 ◆柴田ノ恋
「 ・・・お前までどこ行くんだよ、夏目。」
夏目が振り返った先、
夏目の腕を掴む柴田が
少し低いトーンで言った。
柴田の表情は真剣で、真剣故に
怒りも混じっているようだった。
柴田が夏目の腕を掴む手に力を入れる。
「 いっ・・・!、柴田?」
「 ・・・手伝わせろよ、俺にも。」
「 は?」
夏目が柴田の腕を離そうとした瞬間、
柴田が声を上げた。
「 さなちゃんも
お前と同じ体質なんだろ?
抱えんなよ、一人で。」
真っ直ぐに夏目を見る柴田の眼は
力強く、そして心配に満ちていた。
「 何で、それを知ってるんだ?」
「 そんなの、
ただの親戚の関係だけじゃない事くらい
二人を見てれば分かる。
だから手伝わせろよ、
さなちゃんに良い格好出来るチャンスを
俺にくれ。」
柴田の真っ直ぐな申し出に
夏目は思わず溜め息をついた。
ーいつもそうだ。
柴田の押しに夏目は折れてしまう。
最後の一文は要らないが、
と思うものの。
柴田のその偽りない
格好つけない格好良さは
夏目も嫌いではなかった。
「 分かったよ。」
夏目が溜息混じりに答えれば
柴田は口角を少し上げた。
「 よし、なら行くぞ!」
掴んだ夏目の腕を離さずそのまま
柴田は全速力で走り出す。
「 ぅわっ、!」
走り出す事に備えていなかった夏目は
またも視界がガクンとズレ、
柴田にほとんど引き摺られるようにして
その場を去った。
「 お、おい!柴田!
一体どこに向かって」
「 道案内頼んだぞ!夏目!」
「 はぁっ?!」
いつも身勝手な柴田に引っ張られながら
その身勝手さに呆れながら
でも、ほんの少しだけ
夏目はいつもより心強く感じた。
ー・・・待ってろ、さな(ちゃん)。