第18章 ◆柴田ノ恋
「 だーからっ!
・・・?」
夏目へと必死に講義の声を上げていた柴田が
真横の夏目に視線を落とした瞬間
少し驚いた表情をした。
柴田の視線の先の夏目は険しい顔つきで
心做しか顔色も青ざめている。
「 夏目?」
柴田の呼び声は夏目に
聞こえていないのか、
夏目は何か考え込むように
眉間に皺を寄せた後
思い出したように
勢いよく後ろを振り返った。
「 さな、っ」
その瞬間、
この地に来て感じた
ひやりとした空気が柴田を纏った。
「 寒っ
何だよ、一体・・・?」
ぶるりと身体を震わせた柴田が
訳も分からず
夏目が振り返った方向へと
一緒に振り返った。
しかし、
「 あれ、さなちゃん・・・は?」
二人が振り返った先には
ついさっきまで居たはずのさなが居ない。
まるで今まで居なかったかのように
何一つ落とさず消えてしまっていた。
「 さっきまで後ろに居たよな?
どこ行ったんだ?」
夏目と柴田がワイワイと
言い合っている最中、
夏目同様に柴田も
数歩後ろで笑うさなを気にかけて
何度も視線を送っていた。
柴田もそれなりに
女の子には気遣えるのだ。
初対面であれ
特に気に入った女の子であれば尚更、
夏目が抱くさなへの気持ちほどでは無いが
柴田も心配してしまうのは
最早当たり前である。
柴田がさなが居た場所へ移動して
周りを見渡した。
「 あの子、足早ぇからなぁ・・・。」
全速力で走られたら見つからねぇな、
そう柴田が零した時、夏目が言った。
「 ・・・ごめん、柴田。
折角来てくれたのに
ちょっと、行かないといけないんだ。」
「 は?何言って・・・」
「 すまない!それじゃ!」
唐突にその場での解散を告げられ
柴田の言葉さえ聞かず
夏目はその場を走り出した。
・・・が、
「 うゎ、?!」
ガクンと視界がズレる。
夏目はいきなり動かなくなった体に耐えきれず
蹌踉けながら後ろを振り返った。