第18章 ◆柴田ノ恋
「 で、何で夏目も居るんだよ。」
「 何でって・・・言っただろ、
さなは学校で倒れたから」
「 それはもう聞いた。
何で夏目まで一緒に
さなちゃんを送っていくんだ?」
「 柴田はさなの家を知らないだろ。」
「 そんなの、
さなちゃんに聞けばいいだろ?」
「 途中でさなが倒れたらどうするんだ?
分からないだろ。」
「 ・・・そしたら、誰かに聞いて。」
「 通行人は殆ど居ないぞ。」
「 じゃあ、今聞いておく!
それでいいだろ?」
「 さなの家までの道は少し複雑だぞ。
ちなみに此処からだと後30分はかかるし
柴田は覚えられるのか?」
「 ・・・くっ。
何だってこんな所に連れてきたんだよ!」
さなの家までの道のりを
文句を垂らし続ける柴田の隣で
夏目が一歩も譲らないよう言葉を返していく。
そうして、ついた決着に
柴田はため息を零し。
案内するよう求めた依頼を
最大に後悔した。
そんな柴田を夏目は少し睨むように見上げる。
「 益々頑固になったよな、お前。」
「 はいはい。」
柴田の嫌味を受け流す所はスマートに。
そんな夏目と柴田のやりとりを
数歩後ろを歩き笑顔で眺めるさなは
何だか小っ恥ずかしい気分で
それでいて
嬉しさも混じっている感情を押し殺しながら
夕焼けの近い空の下、
坂道を下って行った。