第18章 ◆柴田ノ恋
「 なっ、何っ?!」
「 しぃっ!
声がデカいぞ夏目。
だから、
さなちゃんと二人の時間をくれ。」
予想も出来ない柴田の提案に
夏目は動揺を隠しきれずに大声を上げた。
それは、柴田とさなの
二人っきりの時間。
夏目の顔を見る為、とやってきた筈の
柴田の当初の目的は
もはやさなへと完全に移行した。
更に、夏目は不要とくれば
何の為にこの土地を案内したのか。
いつも勝手な柴田の勝手な恋に
巻き添え喰らうのは夏目で。
その身勝手に呆れて
いつもなら、好きにしてくれ。
と場所を開ける夏目だが、
柴田の恋の相手がさなとくれば
話は別だ。
夏目の出す答えは一つ。
「 柴田、それはダメだ。
さなはあれでも
学校で倒れて早退してる身なんだ。
大丈夫そうに見えるかもしれないけど、
これ以上外に居させる訳にはいかない。」
そう、妖のちょっかいを受けて倒れ、
そして帰宅途中だったさな。
慣れているとは言え
いつまた妖に遭遇するかも分からない
こんな場所で
全回復していないさなを
このまま柴田に託す訳にはいかなかった。
「 すまないけど、柴田
それはまた次の機会に・・・」
「 よし、
それなら俺がさなちゃんを
家まで送っていくよ。
途中でもしさなちゃんが倒れても
夏目より俺の方が
運んでやれる自信はあるぜ。」
きりっと親指をおっ立てて
チラッと歯を見せ笑う柴田。
その表情に何の影もない。
夏目の言葉を遮り再度提案する柴田に
さなを諦める気は無さそうだ。
・・・しかし、
さなも妖が見える事を知らない柴田。
妖絡みだと伝えれば直ぐに身を引くだろう。
でもそれは何故か気が引けて。
折角会いに来てくれたそんな友人に
さなを譲る気は無いものの、
友人との時間を何処かまだ味わいたい夏目は
仕方ないかと肩を落とし
柴田に付き合う事にした。