第18章 ◆柴田ノ恋
「 ・・・で、
ここは?何なんだ?
とんでもなく歩いたが?」
高台にある神社の鳥居で
街の様子を眺める柴田が
一呼吸置いてから
夏目とさなに視線を委ねて訪ねた。
・・・それは、
町を案内しろという柴田の願いを叶えるべく
この地を詳しく知らない転校生である夏目とさなが
必死に考え、名所を絞り出した結果。
取り敢えず、
いつもの麺処で食事を済ませた後に
(勿論、柴田のおごりである。)
本来自転車という交通手段を使う筈の
眺めの良いと評判の高台にある神社へ
徒歩で行く事にしたのだ。
それが、凶と出てしまい
柴田の体力を極限まで削り
表情まで暗くさせた。
「 柴田が案内しろ、というから・・・。」
「 チャリもってないのかよ!
徒歩で来るような距離か、此処!」
夏目が遠慮がちに話せば
柴田は夏目の二回り程大きな声を上げた。
夏目もさなも自転車なんて
持っていなければ、
乗れる技術も得ていない。
夏目は練習中とは言いつつ
何かあれば走り、
更に速度が欲しければ
ニャンコ先生の背に乗るという
高速移動手段を使うのだ。
さなも、
走れば右に出る者はいない瞬足者。
二人にとって
上り坂道で限りなく減速するような
そんな自転車での移動は殆どしない。
鍛えられた二人の脚力と徒歩の許容範囲に
柴田はゲンナリしながら付き合ったのだが、
そうして見せられたものは
今まで登りきるまでに散々見てきた景色の総合。
少し都会の主に電車移動する柴田からすれば
歩く事の疲労感で景色への感動は
かなり薄れていた。
「 ・・・すまない、柴田。
自転車は俺もさなも持っていないし
練習中なんだ。」
根本的に柴田とは住む世界が違うのか。
そんな風にさえ感じられてしまう夏目が
素直に謝れば、
「 なぁ、夏目。
ちょっといいか?」
何かを思いついたように柴田が
夏目に耳打ちをした。