第18章 ◆柴田ノ恋
「 ・・・なんて言っても、
人に聞いた話だから
本当に従兄弟かどうかは分からないんですけど
・・・ね?」
「 え?」
俯いて少し照れくさそうに話すさなは
最後に同意を求めるよう夏目を見上げた。
それは
従兄弟である事の確証が無い事への寂しさからか
もしくは
従兄弟では無い事を望むような、
どちらともつかないそんな瞳で。
「 あぁ・・・そうだな。」
さなから儚げに見詰められ
夏目も一度目を見開きはしたが
夏目自身も
さなと一番近しい関係である為に
従兄弟の確証が欲しいような、
それでいて従兄弟の確証が無ければ
別の感情が心置き無く湧くのに。
なんて複雑な心情を思い浮かべては
さなの言葉に静かに同意した。
「 へぇー、そういう事か。
・・・ふーん?」
そんな二人の
歯痒いやりとりを見守る柴田が
ふむふむ、と何度か頷きながら
じとっとした視線で
二人を交互に見比べた。
「 な、なんだよ。」
「 ?」
柴田の視線に疑問符を浮かべる二人に
柴田はニッと笑って
二人の肩に手を乗せる。
「 事情は分かった。
が、ここで諦める俺じゃないぞ夏目。
ライバルとしてよろしくな。」
「 ・・・は?
一体、何の話だ?柴田。」
「 まぁまぁその話はまたの機会に。
折角会えたんだし
辛気臭い話じゃなくて
ちょっとこの街案内しろよ。
俺、ここじゃ
田沼の寺くらいしか知らないんだ。」
ポンポンと夏目の肩を叩いてはその身を立たせ
しれっとさなへも手を差し伸べて
優しい手つきでさなも立たせた。
「 案内しろって
そんな、勝手な・・・!」
「 ほら、行くぞ。
飯おごってやっから。」
「 あ、おい・・・柴田!」
「 ・・・わっ。」
夏目の肩に右腕を回し
左手でさなの手を引いて
柴田は歩き出す。
全く、柴田の強引さは相変わらずである。
しかし、そこに嫌味が無く嫌いになれないのは
柴田の人間性か、ただの夏目のお人好しか。
どちらにせよ
二人の関係が悪いものでは無い事に
さなも気付いていた。