第18章 ◆柴田ノ恋
「 じょ、冗談だろ・・・柴田、?」
変な汗が夏目の額と背中を伝う。
とんでもない言葉が柴田から発せられ
夏目とて、動揺しない訳もなく。
「 冗談な訳ないだろ。
俺が女の子を誑かすように見えるか?」
動揺を隠し切れない夏目の前で
へらっと笑って言い切る柴田だが、
夏目からすれば
自分のモテ自慢を平然と話す柴田は
無論、女の子を誑かすに値する人材である。
しかし、
妖絡みで柴田の人間性を垣間見ている夏目。
柴田のそのチャラついた見た目とは裏腹に、
昔の夏目を知りながらも協力してくれる姿は
他でもない柴田の長所である。
今回、わざわざ夏目の住む離れた土地へ
来てくれたのも
夏目を心配し元気であって欲しい、と
夏目の顔を見たくて来てくれたのだ。
そこをどういった経緯で
さなを襲う風に至ったのかは知れないが
きっと何かの間違いである事に
夏目も薄々気付いていて、
当の本人であるさなも
柴田が夏目の友人と聞いて
拒絶した事を謝罪していた。
夏目としては不服な面もあるものの
さなが許すならばそれは
自分が介入する事でも無い。
ましてや、
柴田がさなに恋しようとも
夏目にとっては本来
介入する事では無いのだが・・・。
ー冗談であってくれ・・・!
と願わずには居られない事実。
「 というか夏目、
お前こそさなちゃんとどういう関係なんだよ?
親しそうには見えるけど
夏目の事を先輩付きで呼んでる辺り
付き合ってたり、なんて事は無いんだろ?」
「 ・・・っ。」
図星、というか鋭い観察力の柴田に
夏目は何の言葉も出ない。
そこへ、
「 夏目先輩とは、
従兄弟 なんです。」
柴田の背後からひょっこり顔を出すさな。
不意に現れたさなに
柴田が驚きの声を発するも、
さなは変わらず笑顔のまま
夏目の横へ、ちょこんと座った。