第18章 ◆柴田ノ恋
「さな・・・?!」
ふと、聞こえる
聞き慣れた名前を呼ぶ声。
二人が声のする方へ目を向ける前に
さなの目の前の
怪しい他校生は弾き飛ばされ
さなは素早くその背中に隠された。
「だ、大丈夫か?さな
一体何があったんだ?」
「夏目先輩・・・」
少し噎せながら
夏目の後ろでその制服を掴むさなの様子に
只事じゃないと感じ取った夏目は
さなを襲っていた人物へ目を向ける。
夏目が見た光景からすると
明らかにさなを襲っていた。
こんな人気のない所で・・・。
夏目はさなを背後に置きながら
直ぐに戦闘態勢を取るものの、
下手をすれば怪我では済まないかも知れない。
警察を呼べる暇はあるか?
せめて、さなだけでも逃がして・・・
そんな巡り巡る夏目の考えは
さなを襲った人物を見るなり
パッと一時停止する。
「・・・?!」
夏目が目を向けた先のその人物は
さっと立ち上がって制服についた
土や葉を払い落としてこちらを向くと
ニコリ、と笑い
「 よ、夏目。
久しぶりだな。」
まるで今までの事は無かったかのように
軽く手を挙げて爽やかに挨拶をした。
「 なっ・・・」
「 へ、
お知り合い・・・ですか?」
ギョッとする夏目に
さなはまさか、と尋ねる。
「柴田ーー?!」
落胆と驚きと、
力が抜けるように呆れる感覚で
毎度の事ながら夏目はその名を叫んだ。