第18章 ◆柴田ノ恋
「こんなお昼から飲んでちゃ、
用心棒が聞いて呆れるって
また怒られちゃいますよっ!」
「んー、構わん構わん。
どーせ夏目のやつは学校なのだ
夕方までは帰ってこんさ。
そうだ、夜帰ると伝えておけ、さな。」
一升瓶を片手に
ぽっこりと出たお腹を擦りながら
目を細め心地よさそうに
顔を赤らめ出来上がったニャンコ先生が
日陰で寛いでいる。
たまたま見掛けてしまったさなが
咄嗟に注意するも、
七辻屋の店主からのお零れを貰い
此処を離れようとしないニャンコ先生に
さなは次第に声が大きくなっていた。
「ダメですよーっ、
今日私が学校で妖のちょっかいを受けて
倒れてしまって、
それで早退してきちゃったから
先輩もすぐお家に来てくれるんですっ。」
「 何だと・・・?」
夏目が学校だと高を括って
目一杯羽を伸ばし切っていたニャンコ先生が
さなの言葉にパチリと目を開いた。
昼間は飲まないと約束をした手前
バレると不味いのだ。
夕飯のエビフライを二度と貰えない。
それはニャンコ先生にとって
たまったもんじゃない事だ。
「 それも、ニャンコ先生探して
連れてくって言ってました!
何か酔い覚ましな物は
無いんですか?」
さなの言葉でニャンコ先生は更に
寛ぎ体制からちょこんと座る姿勢へと正した。
いよいよ本格的にまずい。
これはチョビ、中級辺りに
酔い覚ましの薬草を貰わなければ
夏目に言い訳なんて通じない。
観念したニャンコ先生は
チラッと辺りを見渡してから
小さく舌打ちをする。
「 チッ。
折角酒が回って良い気分だと言うのに
やれやれ、世話の焼ける奴らだ全く。
さな、お前は自宅に帰っていろ。
私は急用(休養)をしてから
夏目と合流する。
呉々も夏目には言うんじゃないぞ。」
「 大丈夫なんですか?」
「 酒を注入した万全状態の私に
心配など無用だ。」
さなの心配も余所に。
ニャンコ先生は斑の姿となって
宇宙へと舞い上がり
風の如く山の方へと猛スピードで消え去った。