第18章 ◆柴田ノ恋
ぶつかった相手よりも
柴田の方が重心が重かったのか。
その場に立ち留まる柴田の前で
ぶつかった相手がスローモーションのように
倒れていく。
「 あぶねっ!」
柴田は咄嗟に相手の腕を掴み引き寄せた。
柴田の引き寄せる力が強過ぎたのか
はたまた、相手が思ったより軽かったのか
勢いよく柴田の腕の中に収まると
少しの間、沈黙になる。
「 え、っと、ごめん。」
ぶつかってしまった事と、
不本意だが、抱き締めてしまった事。
両方の意味で詫びを入れてから
柴田はその相手を解放した。
「 こちらこそ、ごめんなさい。
あと、ありがとうございました。
・・・お陰で倒れずに済みました。」
か細い声で謝り、
俯きながら髪を整え
控え目に柴田を見上げる、
ぶつかった相手の少女。
その少女と目が合った途端
ー・・・なっ?!
ピーンと胸に何かが突き刺さったような
苦しくも興奮する感覚に陥る柴田。
「 いや、こちらこそ。
大丈夫だった?怪我してない?」
ー・・・クソ、かわいい。
逸る気持ちを抑え、
柴田は平然を作る。
その間の胸の高鳴りは収まらず
今にも飛び出そうだった。
「 はい、助けてもらいましたので。」
柴田の言葉を受けて
ニコリと答える、目の前の少女。
その笑顔は柴田にとって
かなりの破壊力だった。
しかし、柴田はモテる男。
こんな時でも平然と対応出来る術を持っている。
「 なら良かった。
ところで、君のその制服って世分高校?」
そう、胸が高ぶる時でも冷静に
ぶつかった相手が魅力的でも
やっとの通行人という意識を
柴田は持って居られるのだ。
それに、見覚えのある少女のセーラー服。
間違いなく夏目の通う学校の女子の制服だ。
「 はい、そうですけど。」
少女からすれば
柴田の学生服は見慣れないのだろう、
どうして知っているのかと
言わんばかりの表情で
少女は躊躇いがちに頷いた。
「 案内してよ。俺、友達探してるんだ。」
ニコっと笑って柴田が少女の視線まで屈む。
これに胸を打たれない女子は居ない。