第18章 ◆柴田ノ恋
「 確か、この道だったよなぁ。」
うーん、と考えながら
辺りを見渡す。
しかし、
見えるものは田園地帯と山、
ちらほらと古めかしい民家が建ち並ぶ
という先程からあまり変わらない景色。
夏目に会うべく来たのだが、
夏目の家の場所は聞いた事があるだけで
実際に行くのは初めてだ。
人に聞こうにも、そもそも人が通らない。
ーそれもそうだ。
柴田の学校が早帰りなだけで
一般的にはまだ、
午後の授業が始まったばかりの時間である。
「 やっぱ、
アポくらい取っとくべきだったかもな。」
ふぅ、と一息ついて頭を掻く。
立ち止まっていても仕方が無いし
下校時刻まで時間を潰そうと
柴田は適当に歩いてみる事にした。
「 しっかし、田舎だなぁいつ来ても。」
以前来た時は
夏目の友人である田沼の寺へ泊まった時だ。
あれからいくつかの季節を終えているが
何の変化もない風景。
そして思い出すは、
その時に柴田がうっかり話してしまった
人形屋敷の妖が夏目に着いてきてしまい
妖を打ち倒す為に来た時の事。
なんとか妖を祓う事が出来たが
柴田は自分の無力さを痛感し
それから夏目を思い出しては
また妖の問題に遭っていないかと
少しばかり気がかりになっていた所だ。
本来は普通の高校生として
会って話して、妖とは関係なく
ただ友人として遊び、
一日を過ごそうとそう思っていた。
夏目に特殊な力があるのを知りながら
話してしまった事は後悔しているが
解決出来た後、夏目と少し分かち合えた事は
少しばかり喜ばしい事だった。
ーだから、今回は。
そう、今回こそ
普通の高校生として
会って話したいと思い、柴田は出向いたのだ。
「 よし、探すか。夏目の家。」
そう意気込んだ時、
ふわっと、
時期外れの震えるような寒い風が通り過ぎる。
「 何だ?寒っ。」
嫌な風だ。
早く過ぎ去ろう、と
目の前の曲がり角を小走りで曲がった。
その途端、
「 きゃっ!」
「 うぉっ!」
風が吹く回りばかりを気にし過ぎ
前を見ずして誰かとぶつかってしまった。