第18章 ◆柴田ノ恋
たまには、こっちから行ってやろう、
元気にしてっかな。
ー・・・なーんて、俺らしくないけど。
そんな事を考えながら浮かぶ顔は
大して仲が良かった訳でもない
過去の同級生。
隣町への切符を眺めながら
早帰りとなった学校を終え
駅へと向かうその足取りは軽く
表情もまた明るいものだった。
「 柴田ー!
電車の切符なんか持って
一体どこ行くのよ?」
誰にも見られずに来た道。
学校からは程遠く
同じ学校の生徒は殆ど居ない中。
背後から自身の名を呼ばれ
途端に一時停止。
ー・・・うわ、まじかよ。
こんな時に出会すは、
クラスメートの女子。少し、厄介だ。
「 あぁ、ちょっと。
友達に会いに。」
一旦振り返って、適当に誤魔化せば
同級生の女子は足早に近付き
柴田の持つ切符を指差しながら
何やら怪しむ目付きで柴田を見上げた。
「 へぇー・・・。
友達とか言って、
どうせまた女の子なんじゃないのー?
朝帰りなんてやめてよね、
問題になるのは御免よ。」
殆ど睨むようにして見上げるその目は
まるで不信な感情を表しているかのようで
柴田は面倒事になる前に
踵を返した。
「 おう。
女なら制服でなんてデートしねぇよ。
今回は男だ、 オ ト コ 。」
小さく溜息を零してから
切符を持つ手とは反対の手を挙げ
後ろの女子へと軽く手を振り
駅への道のりを進ませた。
何やら言っている
クラスメートの女子の言葉は
シャットダウンして。
ー・・・夏目、・・・ナツメ、
女みたいな名前だけどな。
そんな事を考えながら
小さく吹き出し、駅へと急ぐ柴田だった。