第17章 ◆花イチ匁
「 何っ、さなが皆を此処に・・・?
それじゃ、みんなは・・・」
妖の言葉に
夏目が声を荒らげた。
が、しかし、
妖は落ち着いた声色で続けた。
「 安心して。
ここに連れてくるのも皆が気を失ってから。
娘の記憶も消してある。
ワタシと夏目しか知らない。
・・・消えた仲間と
また勝負が出来ると思った。
・・・また、
花一匁が出来る、と。
だけど、
その仲間には
ワタシの声は聞こえない。
それに、
ワタシの妖気に当てられ
すぐ気を失う。
悪い事をしてしまった。
・・・夏目。
大切な仲間を
巻き込んでしまって、申し訳ない。
その娘は余程大切なのでしょう。
傷付けるような事をさせて
ごめんなさい。
最後に、
最後に勝負をしてくれて
楽しかった、
・・・アリガトウ、レイコの孫。」
その言葉を最後に
白い霧がかった空は晴れた。
「 ・・・ん、」
そして、
小さく動く夏目の腕の中
「 さな!」
「 ・・・っ
先、輩・・・。」
薄らと開ける瞼。
それは
いつもの優しい真っ黒な瞳。
その瞳が夏目を捉え
少し細くなるや否や、
ふふ、と笑った。
「 ・・・勝ったん、ですね。」
「 あぁ、勝ったよ。
・・・帰ろう、皆で。」
夏目がさなを支えながら
二人はその場に立ち上がった。
「 此処って・・・」
回りに視線を向けるさなの言葉に
夏目も釣られて視線を追うと
暗闇の中と思っていたその場所は
みんなが消えたあの田園地帯。
辺りを見渡せば
吊るされていた西村達も
その場に倒れていた。
「 西村!北本!」
「 実代ちゃん!笹田先輩!」
二人が各々駆け寄って
仲間の肩を揺らす。
「 んんん、ま、・・・待ってくれぇ
俺のシンデレラ・・・」
「 んぇ、」
「 ・・・あれ?私達・・・」
「 一体どうしちゃったのかしら?」