第17章 ◆花イチ匁
「 ふ、ぅ・・・っ
へ・・・っ?」
思わず漏れるさなの声。
じゃんけんに負けたさなは
その場に、崩れるように、蹲った。
一瞬の事で状況が把握出来ないさなは
歪んだ視界の中に映る
ボヤけた夏目を見上げた。
「 ど、・・・して。・・・?」
さながじゃんけんに負けたところで
夏目がさなを殴る事なんて出来やしない。
そう、思い込み
余裕の表情で
その場に立っていたさなだが。
「 ・・・ずっと、
お前が手加減する頃合を見計らっていた。」
跪くさなを見下ろし夏目は言う。
・・・最後の勝負で夏目は
さなの隙をつき、
素早く抱き締めるように
さなの視界を奪い
その勢いでさなの後頭部を
手刀で軽く突いたのだ。
その結果、
不意打ちだったその夏目の攻撃に
一瞬グラつく頭と視界で
さなはその場に立つ事が出来ず
ふらりと倒れてしまった。
「 言っただろう。
・・・どちらかが力尽きて、
倒 れ た ら
勝負は終わり、だって。」
「 っ、そん・・・なっ。」
さなが初めに言ったルール。
それはさなにとって
随分有利なものであった筈。
しかし、
心理戦で夏目が勝利してしまった今。
さなはぐうの音も出ないでいる。
「 勝負に勝ったんだ。
・・・さなを、返せ。」
俯くさなに
夏目が手を差し伸べる。
それは、さなに憑いた妖が
さなから出ていった後の
さなの手を掴む為。
「 ・・・くそっ。
はぁーぁ、
折角、良い依代だったのに、なぁ。」
手を差し伸べる夏目をちらりと見て
さなはやや大袈裟に溜息をついて嘆いた。
「 ・・・でも、」
さなはニコリと笑う