第17章 ◆花イチ匁
「 ・・・お次、行きますよ。」
哀れそうな・・・、そんな表情を
目の前の膝に手を着く夏目へ向けるさな。
しかし、
手加減等は一切掛けぬその物言いは
この状況を愉しんでいるようだった。
「 ハァ・・・ハァ・・・ッ。」
「 あら、
お返事も出来ない程
苦しそうですね?
もう、ギブアップ・・・しちゃいますか?」
ニコニコと、
目の前の夏目へ近付く。
さなは
後ろ手に首を傾げ
夏目の顔を覗き込むように屈んだ。
「 ・・・っ、
まだ・・・だ、っ。」
さなから表情を隠すよう
更に俯き夏目は言った。
「 もう、無理じゃないですか?
しんどそうですよ?
・・・それに、ワタシを殴る事なんて
先輩には出来ません。
分かっていましたよ、ワタシ。
諦めたらどうですか?」
茶化すように、
さなが夏目を挑発する。
その表情は夏目を心配するように見せかけて
薄らと笑顔を浮かべる黒い物。
そのさなを前に
夏目は下がっていた頭をゆっくりと上げた。
「 諦める・・・訳ないだろ、
・・・次、だ。」
姿勢を正す。
夏目が俯けば目の前には
夏目を見上げるさなの顔。
「 ・・・。」
いつも隣に居て
いつも接していたあのさなと
何ら変わらない目の前の人物は
今は中身が全く入れ替わってしまっている。
この現状に夏目は
歯を食いしばり、
覚悟を決めたように拳に力を入れた。
「 ・・・仕方ありませんね。
次で勝負も決まりそうですし、
・・・行きますよ。」
夏目の意気込みを見て
ため息混じりに話すさな。
「じゃーんけん、
ぽんっ
・・・・・・!?」