第17章 ◆花イチ匁
にこりと笑う目の前のさな。
その表情をちらりと見ては視線を落とし
夏目は呼吸を整えた。
「 ・・・分かった。
その勝負、受ける。」
夏目の放つ声量は力強いもので。
思考を巡らせた結果
覚悟を決めたように
強い眼差しの夏目は
目の前のさなから
視線を外さない。
「 へぇー・・・、
殴っちゃうんですね、
ワタシ、を。」
意を決した夏目の目の前で
この状況を楽しむように
挑発染みた言葉を繰り出すさな。
「 じゃあ、早速
始めましょっ。
どちらかが力尽きて倒れるまで、
終わりませんからね?
いきますよーっ。」
くすっと笑って
夏目から距離を取るさなが
軽く握った拳を顔の前で構える。
「 ・・・っ。」
ー・・・さなの為に
さなを傷付ける事はしたくない、
だけど、
さなの為にも
ここで俺が負ける訳にいかないんだ。
だから、ごめん
さな・・・っ。
夏目が心の中で零す本音、
それは何よりもさなを思う気持ちで。
そうして、
さなとの、
いや・・・
さなに憑いた妖との勝負は始まった。
「 じゃーんけーん、
ぽんっ!」
「 !ゲホッ・・・!」
「 また、ワタシの勝ちですね。
・・・夏目先輩、
ワタシを殴るのは
やっぱり気が引けちゃいますか?
このままだと
ワタシが勝って
この子を取り戻せませんよ?」
「 ・・・ぅ、うるさい。
さなの声でそれ以上、喋るなっ。」
手加減を知らないさなに憑いた妖の攻撃は
幾度も続き、その結果フラつく夏目は
さなに触れる事さえ惜しみ。
勝負の動向は、やはり
さなが優勢へと進んでいった。