第17章 ◆花イチ匁
ただ、違うのは
さなの背後から
薄く伸びる青白い手が
さなを羽交い締めにしている
という光景・・・。
「 ・・・、誰、だ・・・?
さなから離れろ。」
少し距離を取る。
夏目は下に落ちぬよう足元も確保しながら
目の前のさなから視線を外さなかった。
「 夏目先輩は、見えちゃうんですね
ワタシの、手・・・。
ワタシがこの子から離れたら、
先輩の大切なあの四人を
助けられませんよ?」
正体を見てもらえて少し喜ぶような
そんな雰囲気で夏目に笑いかける。
異様な程に笑った顔のまま、
さなに憑く何かは
少し、からかい混じりに夏目に問い掛けた。
「 ・・・どういう意味だ、」
「 ワタシは実態が無いから、
妖力の強いこの子の体を借りなければ
言葉さえ発する事も出来ません。
・・・ワタシと勝負して
夏目先輩が勝ったら
四人を返してあげますよ。」
鋭い視線とは正反対に
ふふ、と笑って愉しそうに話す妖。
しかし、
妖の言うその条件に
夏目は一つ、引っ掛かった。
「 ・・・さなは、
どうする気だ?」
それは、
その妖が憑いている
さなの体。
「 この子は、・・・
この子が 無 い と
ワタシは消えちゃうんです。
折角見つけた、良い体を
そう易々と手放せません。
だから、
四人を返す代わりに
この子を下さい。」
ニコリと笑って首を傾げる。
普段のさなならば
こんな素振りはしないであろう。
妖はさなの体を自在に扱い
好き勝手に動かしている。
「 ・・・っ。」
夏目は俯き、
拳を握り締めた。
「 ・・・ない、」
「 ?何ですか?」
「 さなを返さないなら、
その勝負は出来ない。」