第17章 ◆花イチ匁
夏目が助けてくれた、
そう勘違いしたのかと夏目が声を上げれば
夏目の話の途中にも関わらず
さなは夏目の手にそっと
自身の手を重ねた。
「 ・・・?」
ひんやりと冷たいさなの手。
それが夏目の言葉を遮り
夏目の視線も奪う。
その行為を疑問に思った夏目が
視線を上げれば
にこりと微笑むさな。
「 聞こえましたよ、先輩の声。」
「 俺の・・・声?」
「 外からの先輩の声に気付いたから、
奥底まで落されずに済みました。」
「 奥、底・・・、?」
にこっと笑ってとある方向を指差すさな。
状況が分からないまま、
夏目はさなの指差す方へ
視線を向ける。
「 ・・・っ!?」
そこは、
暗い闇の中で
見知った顔が何人も
白い太いロープのような紐で
吊るされている
・・・異様な空間。
「 、なん、だ、・・・これ・・・?」
夏目は思わず近寄り、中を覗く。
「 ・・・、?!
西村っ!北本・・・?!
それに、
笹田と園田さんも・・・っ!」
ギシギシ、と鈍い音を立て揺られる
夏目が探していた四人の姿。
「 ・・・どうにかして、
引っ張りあげないと・・・」
見た所、意識は無いであろう四人。
助ける為にはどうすべきか。
引っ張り上げるにしても
場所が低く、
吊るされたロープの根元は遠い。
「 ・・・さな、
俺が今から下に降りるから
さなは此処で待っていてくれ。」
「 はい、分かりました。」
夏目の言葉ににこりと微笑み頷く。
・・・が、
「 ・・・その前に、
勝負しない?」
夏目が下に降りようと手を掛けた瞬間
背後から、いつもとは違う
さなの低い声色が響き渡った。
「 ・・・え、?
さな・・・、?」
思わず振り向く、
さなの居る背後。
「 ・・・っ!」
そこには、
いつもと同じ
さなの笑顔。