第17章 ◆花イチ匁
「 ー・・・っ、・・・、い・・・!」
ふわふわと揺らされる
微睡みの中、
遠い所から
誰かの声が聞こえる。
ー・・・だ、・・・れ?
簡単には動かない体は
目を開けることも叶わず
そっと、
耳をすませた。
「 しっ・・・、ろ・・・!」
徐々に近付く声、
それは聴けば心がふわりと跳ね上がり
何故だか体中を暖かくさせる声色。
ー・・・この、声・・・は・・・、
重い体が少し浮き上がる。
その弾みからか
腕の神経が戻ったようで
ピクリと動かせる事が出来た。
「 ・・・ぅ・・・」
そうすれば、
遠くから聞こえていた声は
鮮明に聴こえ
少しずつ体の感覚が戻り始めた頃
唸るように声を絞り出し、
薄らと瞼を開けた。
「 さな!」
ボヤける視界に映るは
見慣れた、・・・いや
一番に会いたい人物。
「 な、っ・・・め先輩、」
心配の範囲を超えたのか、
さなの目の前にある
夏目の顔は青く
血色の悪い肌に
目を見開きぶつかる視線。
さなが目を開け
その名を呼んだからか
夏目はほんの数秒程、
停止してしまったが
まん丸く開いていた夏目の瞳は
さなの声を切っ掛けに
柔らかく歪んだ。
ふわり、
さなの視界が鮮明になる。
しっかりと目の前の夏目を視野に捉えると
その安堵から軽く微笑んだ。
「 さな・・・、良かった・・・。」
絞り出すような声で
夏目が呟いた後、
そっと優しく
さなの体を腕の中に仕舞った。
「 ・・・っ、へ
夏目、先輩・・・?」
「 っ!あぁ、ご、ごめん、さなっ。」
さなの上げる声に
はっと我に返り
夏目はその体をゆっくり離した。
「 さな、怪我は無いか?」
「 ・・・はい、お陰様で。」
「 いや、俺は何も・・・」