第17章 ◆花イチ匁
「 いたた、・・・夏目、先輩っ。
ごめんなさい、
誰も居ないかと思ってて私
周りを見てなくて・・・」
「 い、いや、
・・・こちらこそすまない。
さな、怪我はないか?
大丈夫?立てるか?」
さなも夏目と同じように
額を擦りながら目を向ければ、
さなを見て驚きを隠せない夏目が
ワタワタとしながら跪き
さなに手を差し伸べた。
「 それより、どうして先輩がここに?」
夏目に差し出された手を取り
小さく礼を言えばすぐ様切り替える話題。
「 それが、皆が居なくなったんだ。」
「 ・・・居なく、なった・・・?」
まさか、自分が居なくなったからと言って
追いかけてきたのではないか。
そんなさなの不安を上回るような
思いがけない夏目の言葉に、
さなは復唱するだけだった。
「 そうなんだ、
初めにさなと園村さんが消えて
笹田に話を聞いていたら西村と北本が消えた。
・・・そして、笹田も姿を消してしまった。
それで、
笹田からさなが走って行った
って聞いた方向へ来てみたら
此処だったんだ。
まさか、
一番にさなを見つけられるとは
思ってもみなかったけれど
・・・さなが無事で、良かったよ。」
後半はため息混じりに零すように話す
夏目の本音。
「 夏目先輩・・・。」
ふわっと笑う夏目のその姿に
さなもどこか気の抜けるような感覚で微笑む。
さなも実代を探し
誰も居ない校舎を一人走っていたのだ。
夏目に会えた事で恐怖心と緊張感も
大分と軽減された。
そして、
ぱふっと乗せられる
さなの頭に夏目の手。
「 さな、
一緒にみんなを探そう。」
微笑む視線の奥深く、
とても力強い夏目の眼光が
さなを捉える。
「 ・・・はい、!」
夏目の言葉に応えるよう
さなも力強く答え、
二人は粗同時に足を進めた。