第17章 ◆花イチ匁
カツカツ、カツ・・・と
響き渡る夏目の足音。
昇降口は確りと施錠されていて
普段空いている中庭の窓から
忍び込むように入った夏目は
上靴へと履き替える時間も余裕も無く
土足のまま掛けていた。
「 ハッ・・・は、皆・・・。」
階段を登るにつれて強くなる
先程感じた妖気。
暖かい気配を消すかのように
嫌な空気が上階を覆い占めているようで
夏目は表情を固くさせた。
急いで向かう
三階の一部屋。
旧視聴覚教室とは
多くの生徒が利用する中央階段からは
遠く離れた階段からしか
入ることが出来ない構造で
利用するには複雑という理由から
使われなくなった教室である。
そのせいか、回り道が多く
転校生である夏目も
その場所の位置は少し曖昧で
気配を頼りに掛けていた。
カツカツ、カッ・・・。
そして、
辿り着く
離れた階段の最上階、
気配の強いフロアである。
夏目は一度足を止めて、息を整える。
そして、
大股でその場を踏み出した。
・・・すると、
「 ・・・、ぅわっ、!」
「 ひゃっ!」
駆け出した勢いで
角を曲がったせいか、
障害物である何かに盛大にぶつかる。
「 いっ・・・てて、」
その障害物を下敷きに倒れ込んだ夏目は
ぶつけた額を擦りながら上体を起こし
目の前の障害物に目を向けた。
「 ・・・っ、?!」
目の前のその障害物。
その存在を理解すると夏目は目を見開いた。
「 ・・・さなっ!」