第17章 ◆花イチ匁
「 ハァッハッ・・・っ!」
一目散に駆け抜け辿り着いたその場所。
忍耐力は人並み以上にあるものの
元々体力が底知れている夏目は
校門を入った時点で足を止め
膝に手をついて息を整える。
「 ・・・皆。」
そして、見上げるは見慣れた校舎。
夕焼けのオレンジに光る
校舎の全窓が少し眩しく
目を細める夏目に
フワッと過ぎる微かな気配。
「 ・・・っ。」
夏目は気を集中させ
視線を強くし
校舎に目を向ける。
「 ・・・ 」
校舎の端から端へ
ゆっくりと視線を動かす。
そして、
「 ・・・あそこ、か。」
夏目の視線を止める
三階の一部屋。
そこは普段使われない
開かずの旧視聴覚教室。
そこから感じる微かな妖気
それは嫌な気配に混じった
感じ慣れた少し暖かい気配。
普段、
夏目を取り囲むものである。
ー・・・みんな・・・、
「 絶対に、・・・助けるから。」
夏目はぐっと両拳を握り締め
整った息を大きく吸い
そして大きく吐くと
その場を駆け出した。
下校時刻を優に超え、
全教員も出た
もぬけの殻となった校舎へ。