第17章 ◆花イチ匁
「 へ・・・」
夏目のドアップにハラハラとさせられた笹田は
夏目の問われる言葉に脱力し、
気を取り直して姿勢を正すと
咳払いを一つ零し、話し始めた。
「 ・・・それが、
園村さんが急に居なくなって
探しに行くってあっちに行っちゃったの。
・・・先輩方は先に帰っていて下さい、って。」
笹田は
さなが消えた方向へ指を差しながら
目の前の夏目に話を続けた。
「 園村さんが居なくなったのか?」
「 えぇ、そうなの。
男子がじゃれ合ってるのを見ていたら
姿が見えなくなっちゃって。
それで少し
望月さん顔色も悪かったような。」
「 ・・・。」
消えた友達を探しに
さなが飛んでいってしまった。
さなならば友人が居なくなれば
真っ先に探しに行くであろう事は
彼女の性格を知っていれば
納得のいく話ではあるが・・・。
先程聞こえた妖の歌声と
林の向こうに見えた複数の影で
その友人が単に逸れた訳では無い事は
察しがつく。
妖の面倒事に巻き込まれたのは確かである。
さなの顔が青褪めるのが
目に浮かぶ夏目は表情を険しいものに変えた。
「 ・・・夏目くん?」
夏目が深刻な表情で考え込んでいるのに対し
笹田が首を傾げその名を呼んだ。
「 笹田、」
笹田に呼ばれた夏目は
その両肩を掴みしっかりと視線を交差させる。
「 な、どうしたの?」
夏目の行動に一々顔を紅くさせる笹田は
アタフタとしながら、
手をパタパタさせるしか出来ず。
「 俺がさな達を探しに行ってくるよ。
そろそろ、日が暮れてしまう。
暗くなると危ないから
笹田は西村と北本と先に帰ってくれ。」
「 えっ?ちょっと、
宛はあるの?
皆で探した方が見つかりやすいんじゃ・・・
わ、私だって手伝うわよ。それにほら
西村くんと北本くんにも探してもらった方が
・・・。」
今にも駆け出しそうな夏目の腕を掴み
笹田が急いで言葉を当てて行く。
しかし
「 え、・・・あれ?
西村くんと北本くん・・・
どこ行っちゃったの?」
「 っ!」
笹田が指差す方向に居た筈の
西村と北本は消えていた。
「 西村!北本!」