第17章 ◆花イチ匁
そうして、
さなと実代のやりとりも一段落終え、
六人がゆっくりと帰路道を歩いていた頃
「 ⋯はーな、い⋯ もんめ⋯♪」
風に乗って届いた
微かに聴こえる、子供たちが遊ぶ歌声。
「 ⋯?」
その声に気付いたさなが
周りを見渡すも、
子供の姿どころか
子供たちが遊べるような公園、
若しくは広場のような場所は見当たらず
田んぼと林しか視界に映らない。
「 さな、どうしたの?」
一行から遅れを取り、何かを探すように
キョロキョロとしているさなへ
実代が立ち止まり問いかけた。
「 今、
子供達の歌が聴こえたから
近くに居るかと思って見てたんだけど
居なくて。⋯空耳かな。」
実代の声にはっとして
さなは子供達を見つけるのを諦め
小走りで実代の隣に追い付いた。
その様子を
夏目がしっかりと見ていた事は知らず⋯。
「 お腹空いてきちゃったね。」
「 さなはいつもお昼少ないからでしょ?」
二人の他愛の無い話に
上級生も加わり、
「 へー、さなちゃんって少食なんだ。
も、もし、お弁当残したりするんだったら
俺が、食べてあげ⋯」
「 こら、セクハラやめなさい!」
西村の発言に
笹田がストップをかけるべく
手持ち鞄を西村の背中にヒットさせた。
「 いっでぇ!
どこがセクハラなんだよ!」
「 いやー、西村が言うと
全部下心が見えるからな。」
「 んな!失礼な!
それを言うなら北本、お前もそうだろ?」
いつものやりとりを六人で交わす。
そんな普通の光景が
とても幸せな時間に感じられるさなだったが⋯
「 ⋯あの子、が欲しい⋯
あの⋯子が欲しい、
⋯あの子がほ、しい⋯!」
先程の歌声はいつしか
鮮明にさなの耳に届き
「 お前が欲しい」
急に耳元で囁かれる低い声色。
「 ぃやっ!」