第17章 ◆花イチ匁
「 ぷっ。あはは!顔真っ赤!
もう、冗談よ!
⋯なんてことも無いけど、
⋯でも、さな
早くしないと取られちゃうよ?
夏目先輩、結構人気だから。」
ー⋯私だって、タイプなのよ?
こんな事、さなには絶対
口が裂けても言わないけど。
さなの慌てふためき様に
思わず噴き出し笑う実代。
表情はさなをからかい笑うものの
その心は少し悲しげで。
それでも、親友を応援するべく
実代のその本心は
自身のうちに閉まっておいた。
「 人気⋯」
さなが復唱する実代の言葉。
夏目の人気とは本人には分からずとも
夏目の学年と、下級生であるさなの学年に
噂がよく流れているのは
さなも多少なりとも聞いた事があり
実代の言葉には否定出来ないでいた。
しかし、
「 取られちゃう、かぁ。
そもそも、
親戚なんだ夏目先輩と私。
だから、そういうのは⋯無いかな。」
笑うさなの口から発せられたのは
実代の本心よりも切ない言葉だった。
「 えっ、
ええええぇっ!」
そして、
悲鳴にも近い叫び声をあげたのは
他でもないさなの隣を歩く実代。
「 なんだっ?」
「 どうしたんだ?」
実代の叫び声に足を止め振り返り
声をかけるのは西村と北本。
「 どうかしたのか?」
さなと実代の少し前を歩いていた夏目が
すぐに近寄り心配の眼差しで
二人に視線を向けた。
「 いや、その⋯。」
「 夏目先輩と私が親戚って言ったら
驚いちゃったみたいです。」
どこか、力の抜けきった様子の実代に代わり
清々しい表情のさなが事情を話すと
「 あぁ、知らなかったのか。
俺の学年ではほとんど皆知っているから
てっきり、君も知ってるかと思っていたよ。」
さなと同じく爽やかな表情で
夏目も答えた。
ー⋯こういう所が親戚の血、なのね⋯。
「 ⋯はは、は。」
微笑み合う二人を前に
力無く笑う実代だった。