第16章 ◆雨乞儀式
女狐妖とさなの持つ掬いが
すうっと消えていく。
そして、
目の前の大きな壺にも
壺と同じ模様の蓋が
ふわりと現れ、静かに掛けられる。
「 之にて、
雨乞いの儀を終了とする。」
女狐妖が低く通る声で
儀式終了の言葉を述べた後
さなと、
さなの元へと駆け寄る夏目と
ニャンコ先生へ
順に視線を運んだ。
「 ⋯さな様、夏目様、達磨狸様、
儀式を無事に
執り行う事が出来たのは
貴方達のお陰だ。例を言う。
本当に、ありがとう。」
そう、深々と
頭を下げた。
「 頭を上げてください。」
目の前の女狐妖に微笑み、
その両肩を両手で優しく包むのはさなで。
「 力になれて、
本当に良かったです。」
顔を上げた女狐妖を確認して
同じ声色で言葉を繋げる。
そして、
両肩に乗せられたさなの両手を
ひとつにし、
ぎゅっと握れば
女狐妖はそのまま自身の額に押し当てた。
「 本当に、ありがとう。」
何度も何度も、そう礼を言い続けた。
そして、気付けば聞こえる。
ぽつ、ぽつ、
と久々に伝わる
雫の落下音。
「 これは⋯?」
「 もしかして、雨、か⋯?」
さなが外を見上げれば
既に視線を移していた夏目が答える。
「 あぁ、そうだ。
やっと紡げた、梅雨の始まりだ。」
女狐妖がさなと夏目に笑いかけた。