第16章 ◆雨乞儀式
そうして、さなと女狐妖が
お互いに壺の水を掬っては撒き
宙に水の波を咲かせ続けていた。
どこか、嬉しそうに
柔らかい雰囲気で
さなと女狐妖が
遂行していく、⋯雨乞いの儀。
「 ⋯綺麗だな、ニャンコ先生。」
傍らで見守る夏目が
少し微笑んでぼそりと呟いた。
さなが笑っているなら、と
安心の笑みで。
「 あぁ、
そうだな。」
そんな夏目を見上げた後、
ふぅっと息を吐いてニャンコ先生が答える。
「 あの水自体が
さなの妖力を吸って
意思を表現しているのだ。
⋯しかし、
あそこまで大袈裟に
その姿を維持しているという事は
お前の力もかなり吸っているぞ。」
ニタッと笑って
少しからかい混じりにニャンコ先生が言う。
「 あぁ、いいんだ。
力になれたら、
俺はそれでいいんだ。」
「 何?
またお前はそうやって⋯」
すぐ、無茶しおって!
そんなニャンコ先生の叫びも
夏目はどこか遠くで聞いているような感覚で、
先程とは一変した柔らかいその空間の中
夏目はニャンコ先生の言葉すら心地好く
さなと女狐妖を見守っていた。
「 ⋯さな様、
これで最後だ。」
空となる壺の中。
一つの掬いをさなと女狐妖が持つ。
ーぱしゃん、
最後となる、
水しぶきの澄んだ音が聞こえる。
それは華麗に宙を舞い、綺麗に消えていく。
ーチリ-ン⋯
鈴の音が小さく鳴り響く。
それは、
儀式の最後を告げるように。