第16章 ◆雨乞儀式
女狐妖の声を合図に
ぼこぼこと湧き出した水。
みるみる間に
目の前の大きな壺は
湧き上がる水でいっぱいとなり
ひたひたと静かに波打っていた。
すると、
何処からともなく
壺の上に橋を架けるよう
掬いが二つ現れた。
その光景に不思議に思うさなが
隣の女狐妖を見上げれば、
女狐妖はさなを見てこくりと頷く。
「 これは、日照雨様の作った物だ。」
「 ⋯!」
女狐妖の言葉に
ぱちりと大きく瞬きをして
再度掬いに視線を送るさな。
良く見れば、
柄には繊細な模様が施されており
何処を見ても傷一つ無い。
「 綺麗⋯」
思わず漏れるさなの声に
女狐妖は安心したように微笑んだ。
そして、
何の合図も無く
二人共が同時に掬いに手を伸ばし
その柄を優しく掴んだ。
「 ⋯。」
その重みに覚悟しながら
ゆっくりと持ち上げる
柄の長い掬いは
さなが想像していたよりも軽く
手に馴染む。
「 いざ、水を撒く。」
「 はい」
女狐妖の掛け声に
二人が壺の中の水を掬えば
水は端から結晶のように粒となって
光り輝き、宙を舞い
ぽつぽつと蒸発していく。
「 ⋯っ!」
まるで雪のように
舞っては、花火のように消える。
その光景がいかにも美しく
見蕩れてしまうさなに
女狐妖が方に優しく手を置いた。
「 全て、撒き切ろう。
地上の者達が待っている。」
「 えぇ、そうですね。」
女狐妖の言葉に微笑み返し
さなと女狐妖は
次々と
結晶を宙に浮かべた。