第16章 ◆雨乞儀式
そうして形を変えたその星屑は
女狐妖の片手には納まらず
両手で支えた。
「 これは⋯面、ですか?」
そう、
その黄色い星屑が変形した姿は
見覚えのある狐面だった。
「 あぁ、⋯これは
日照雨様の、面だ。」
心做しか、
女狐妖は優しい声色となり
さなを見る。
「 交替の儀が
無事に終わったという、証だろう。」
女狐妖は、両手で支える狐面を
自身が嵌めている狐面と交換し
顔に付けると
手に持つ、先程までの狐面が
ひゅう、と消えていく。
そして、
日照雨様の遺した狐面が
女狐妖の顔に完全につくと
女狐妖の纏う着物がふわりと揺れ
見る見るうちに袴へと変わった。
「 ⋯!」
その様子を間近で見るさなは
目をまん丸くさせながら、
夏目とニャンコ先生は
未だ、警戒を解かず
その行く末を見守る。
「 ⋯さな殿、」
ふわりと揺れていた袴が
しっくりと女狐妖に収まり
不思議な着替えが終わると同時に
女狐妖は
目の前のさなへと手を差し伸べた。
「 ⋯はい」
「 参ろう。
雨乞いの儀をする為
私にその力を貸してくれ。」
「 ⋯、はい!」
女狐妖の差し出す手を
一つ返事で受け取るさなは
女狐妖と共に
部屋中央にある壺へと移動した。
「 雨乞いの儀。
今ここで開始致す。
水よ、湧き上がれ。」
壺の前へと立ち
女狐妖が柏手を打って
儀式開始の言葉を述べる。
すると、
ぼこぼこと
不思議に水が湧き起こった。