第4章 ◆二人きり
どろー…ん。
扉が開いたかと思うと
スライムのような不規則に体を変形させる
あまり見慣れない妖が
どろりと侵入してきた。
「 っ……。」
その詩滝と呼ばれる妖の妖気が
悪質にも近くさなは思わず床に手をつく。
「……さな。」
その姿に夏目が一歩前に出ると
さなを庇うように隠す。
「夏目、
外で感じた気配はこいつのようだな。」
夏目の鞄から、こぼれ落ちる様に
コロンと出て来たニャンコ先生が
そう囁くと
詩滝はまたも体を変形さし
その姿を維持しながら
夏目の目の前まで来た。
「オ前、レイコ、違ウ。」
その詩滝の一言に
黙っていた刹凪がすっと立ち上がり
静かに夏目に近寄ると
「レイコの孫、そこをどいてくれ。
レイコに詩滝の名を返してもらわねば
…我らは帰られん。」
そう、哀しげに呟いた。
「帰る…?」
夏目はふと頭の中に浮かんだ疑問を
そのまま投げ掛けると
近付く刹凪と詩滝に
指一本触れさせ無いとでも言うように
座ったまま床に伏せた状態で動かないさなを
背後に隠した。
「お前達、
ここに住んでいたわけじゃないのか?」
訳がありそうな2人の妖を目の前に
夏目は分かり易く返答を催促をする。