• テキストサイズ

†夏目友人帳† ​~新友人帳物語~

第16章 ◆雨乞儀式







思わず立ち上がったさなは

多少蹌踉めきながら


日照雨様と女狐妖の居る場所まで掛ける。




「 さな!」




その後ろでさなを止めるべく

夏目が手を伸ばすものの、

その手はさなに届くこと無く

真下の畳をついた。






「 日照雨様⋯、!」




さな本人にも夏目の声は

聞こえておらず、


散りゆくように舞い上がる

黄色く光る蝶の群れの中に

さなは跪く。










「 ⋯さな様」










女狐妖が蝶を見上げていた視線を

真横のさなへと向けた。



と同時に





ー⋯ガバッ!




「 ⋯っわ!」






跪くさなに覆い被さるよう

女狐妖は抱き竦める。




「 ⋯ぇ、あの⋯、っ?」



「 今だけ、⋯頼む。」







目の前を覆われ、

身動きと視界を奪われたさなは

困惑の声を上げるも、その声は

女狐妖の零す様に囁かれた短い言葉に遮られた。



しかし、





「 さな!」




その状況を目の当たりにして

夏目が黙る筈もなく、





「 待て、夏目。」


「 ⋯?」


「 儀式の最中だ。」



「 けれど、さなが。」



「 恐らく、あの蝶が舞い切れば

雨乞いの儀に変わるだろう。


夏目、お前は

さなが崩れないよう

ここで妖力を分けてやるんだな。」




「 分けるって?」



「 なに、此処に居て

さなの事を想ってさえいれば

お前なら出来るさ。」




ニャンコ先生に止められ

眉間に皺を寄せながら

夏目はもう一度その場に腰を下ろした。





「 想い⋯。」




ぼそりと呟き

膝の上で拳を握る夏目を

ニャンコ先生は

少し安心しながら見守っていた。














「 ⋯、蝶が消えるぞ。」





ニャンコ先生の言葉の通り




数匹の蝶が

空へと舞っては消えていった。


/ 406ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp