第16章 ◆雨乞儀式
蹲る日照雨様の元へ膝をつく
女狐妖はそのまま畳に手をつき
視線をキツく日照雨様へと向けた。
「 主、交替の時⋯、」
「 ⋯ぅぅあぁ゛」
苦しむ日照雨へ向ける視線は
厳しくもあり、何処か寂しげに
眉間にしわを寄せ
深く深呼吸をした。
そして、
「 貴方に替わり、
私が日照雨の名を頂く。
貴方に替わり、
私が引き継ぐ事をお許し下さい。
その身を持って受け継ぎ
生涯この社へ尽くすと誓いましょう。」
ハッキリとした声で唱える言葉は
揺るぎない後継の意と捉える事が出来る。
生半可な気持ちで
継ぐ訳では無いのだろう、と
その場の三人は感じ取っていた。
その瞬間、
チリ---ン
何処からともなく
聞き覚えのある鈴の音が響く。
そして、
苦しんでいた日照雨様がムクっと起き上がり
肩で息をするように
ゼーハーと大きく
ゆっくりながらも何とか踠く事を抑え込み
目の前の女狐妖の腕を
がしりと掴んだ。
「 ⋯っ!」
その力は加減が無く強く
女狐妖は無意識に顔を歪ませていた。
「 わ、我の座を⋯っ」
「 ⋯?」
チリ-ン
日照雨が何かを言いかけたとほぼ同時に
二度目の鈴の音が鳴る。
それは、終焉を告げるように。
「 頼⋯む、」
日照雨様はふっと
にこやかにいつもの表情へと戻すと
その場に倒れ込んだ。
しかし、
倒れる衝撃は無く
キラキラと
体から黄色い蝶が舞い上がるように
飛び立ち
その場から
日照雨様の姿は消えていた。
「 日照雨様⋯!」
そんな情景に
思わず声を上げたのは
遠くから見守っていたさなだった。