第16章 ◆雨乞儀式
「 ・・・一体、どういう事だ?
お前がさなに術を掛けたのは
日照雨様に喰わせない為だったのか?」
「 ・・・あぁ、そうだ。
私は200年以上前から
日照雨様の嫁役に使える身。
日照雨様の異変にも直ぐに気付いたが
私の力では止められなかったのだ。
何か方法はないかと考えあぐねた結果
嫁役に支障をきたす事を思い付いた。
しかし
嫁役の妖も私と同じ低級妖、
私が術を掛けたところで力の差は無く
殆どが失敗に終わっている。」
夏目の質問に
女狐妖が目線を夏目に合わせて
口早に話し始めた。
そして
夏目と少し呆れた態度のニャンコ先生に
視線を向けた後、
女狐妖はそっとさなの前へと移動し
さなの頬に優しく手を添える。
「 ・・・?」
その女狐妖の行動に
さなが目を丸くさせて見上げれば
それを見ていた夏目は
少し表情が険しくなっているが
その場に居る者は気付かない。
「 だが・・・、
貴女の力は強く、私が傍に仕えるだけで
今までよりも遥かに強い妖力で
術を掛けることが出来たのだ。
だから、安心したのだ。
・・・喰われずに済む。と。
それがまさか、社まで入るとは・・・。
貴女の意志の強さか。
お陰で気配を辿り、
此処に辿り着く事が出来た。」
それはさなに対する
直向きな行動に対して
微笑んでいるかのような声色。
褒めるように優しくもあり、
心配が混じる強さも有った。
「 あの・・・行くなという声は
あなただったのですね・・・?」
あ、と声を漏らして
はっと気付いた事をさなが口にすれば
女狐妖は静かに頷いた。
「 ・・・。」
ー・・・頭痛の中に
そんな、声が混じっていたのか。
ここに来て真実を知る夏目は
何故言わなかったのか、
という疑問を言葉には出せず
ぐっと飲み込んだ。