第16章 ◆雨乞儀式
夏目がゆっくりと背後へ振り返る。
「 ・・・っ、!」
強い妖気に当てられながらも
その妖気に対して夏目に見られる異常は無く。
疑問に思いながらも
腕に抱えるさなが落ちないように
膝で立ちながら夏目は
背後の光に目を細めた。
「 ・・・お前は、・・・」
そうして振り返る先に見る
光に包まれたその姿は
夏目にとっても
ニャンコ先生にとっても見覚えがあった。
「 ふん、やはり使用人の。」
「 ・・・女狐妖。」
ニャンコ先生には
分かっていたような口振りだったが
夏目は目を見開いた。
「 どうして、」
想像もつかなかったと態度に表す夏目に
さなの使用人である女狐妖が
ゆっくりと近付き手を差し伸べる。
「 その娘には力を借りる。」
「 は?・・・そんな、無理だ。
さなは今・・・」
逃げると言う土壇場での
女狐妖の急な申し出に
夏目が断るべく、ふっと
さなに視線を落とす。
・・・が、
「 ・・・え?
さな・・・?」
夏目の視線の先には
先程まで頭の痛みに悶えていた姿の
さなでは無く、
「 夏目先輩。」
ハッキリとした意識で
夏目を見上げているさなの姿だった。
「 さな、
頭はもう平気なのか・・・?」
夏目に支えられていたさなが
夏目の腕から離れ自立すれば
夏目が疑い深げに問い掛ける。
「 なんだか、
嘘のように無くなって・・・ます。」
そんなさな自身も驚いた様子で
へらっと笑い頭に手を添え答えた。
そんなやり取りの最中に
女狐妖がゆらっと二人の横へと回り、
二人と目線を合わせるように屈んだ。
「 先程はすまない。
貴女を日照雨様に喰わせる訳にはいかず、
着物と下駄に術を仕込ませてもらった。
・・・失敗に終わったが、
私が来るまで無事で良かった。」