第16章 ◆雨乞儀式
「 して、どうする。
嫁役の使用人であるお前が
態々ここまで来ると云う事は
逃げるだけではなく
とびきりの解決策を持ってきたのだろう?」
先程の遣り取りは静かに聞いていた
ニャンコ先生が
目だけがニヤリと笑った表情で
分かり易い程挑発的に
女狐妖へと言葉をぶつける。
「 そういえば、
さなの力を借りるって言っていたな。
場合によっては断るぞ。」
ニャンコ先生の言葉に続けて
威嚇的に言葉を繋げる夏目。
それはさなに対する心配の塊である。
「 心配するな。
力を借りると言っても
この間に居てもらうだけだ。
私の力では今の日照雨様を止められない。
しかし、
貴女の力がこの間を覆ってさえいれば
日照雨様のお心は変わらぬまま、
社を破壊する事なく
・・・消滅出来るだろう。」
「 ・・・え、!」
「 消滅って・・・!」
女狐妖の策に
どうしても日照雨様の消滅は
止められないらしい。
その事実に夏目とさなは
思わず声を上げるが
「 ただ消滅するだけ、
では無いのだろう?」
ニャンコ先生はピクリと耳を動かし
鋭い眼光で女狐妖に問い掛けた。
「 ・・・あぁ、その通りだ。
日照雨様が消滅する前に
私が後継とする儀を行う。
そして、上手く行けば
貴女・・・さな様に
初めの嫁役をして頂きたいのだ。」
女狐妖の言葉に一瞬の沈黙が流れた。
そして、
「 へっ・・・あ、あなたが?」
「 は、はぁ?
そんな、お前は女狐妖だろ、
無茶苦茶な・・・」
さなと夏目が顔を見合わせて
ほぼ同時に否定の声を上げた。
「 あぁ、そうか。
人間は性を意識する生き物だったな。
妖にとっては
見てくれだけの問題にしか過ぎん。
安心しろ、大丈夫だ。」
「 ・・・まぁ、」
ー・・・見た目だけでも女同士なら・・・。
そんな夏目の本音は
口が裂けても言葉にする事は無かった。