第16章 ◆雨乞儀式
抱き締めるその身に
夏目が優しく
ポンポンと掌を打つ。
・・・が、しかし
「 もういいだろう、お前達。
まだやりたいのなら
帰って家でやるんだな。」
一部始終、
夏目とさなのやり取りを見終えた
本来の姿に戻っているニャンコ先生が
心置きなく突っ込む。
「 ・・・あ、」
「 すまない・・・。」
現実味のあるニャンコ先生の声に
はっと我に返り
ボンッと顔を赤面させて二人は離れた。
「 ・・・?
!」
そして、二人の視線も離れた時
さなは
ニャンコ先生の隣で蹲る日照雨様に
目が行く。
「 日照雨様・・・っ?!」
思わず駆け寄ろうとしてしまう
さなの腕を掴んで阻止したのは
夏目だった。
「 ・・・駄目だ、さな。
近付かない方がいい。」
「 でも・・・っ、」
夏目の制止の声にも
反発しようとするさなだが
「 やめておけ、さな。
今触れると、
こいつの理性がもたんぞ。」
ニャンコ先生が更に言葉を加えて
さなの前に立ちはだかった。
「 理性・・・?」
「 二百年も妖を喰らっていたのだ。
それはもう、妖にとって
本能的に喰う事しか考えの無くなる年月。
しかし、
社に入る際に私達を拒めば
すぐさなを喰えるし
許可して入っても直ぐにさなを攫い
私達を巻いてしまえば喰えた。
そんな喰える機会はいつでもあった筈だが
お前を労った後に
連れてきたのも雨乞いの儀の間。
挙句に喰うのも躊躇うなんて事は
最後の欠片のような理性で
踏ん張っていたのだろう。
・・・残された
神の威厳とやらが邪魔したか。」
「 神の、」
「 威厳・・・。」
ニャンコ先生の言葉に夏目とさなは
ニャンコ先生に向けていた視線を
月明かりの一番照らされている
苦しみ悶える日照雨様へと向けた。
「 ・・・っ、ク・・・ッ!」