第16章 ◆雨乞儀式
ー瞬間、
ふっと顔を覆っていた手が退いて
薄らと青白い明かりが入り
ボヤけた景色が視界に映る。
「 ・・・っ、」
さなが日照雨様の手から解放され
その場に脱力し倒れ込む既で
ふわっと優しく抱き留められ
「 ・・・?」
衝撃に備えて閉じた目を
ゆっくりと開ければ
「 っと、
大丈夫か?・・・さな、」
その聞き慣れた程良い高さの
優しく通る声と
月明かりに照らされ揺れる瞳と
ふわっと靡くその淡い髪の人物に
さなは一気に安堵感に満ち表情が緩んだ。
「 夏目、先輩・・・」
ボヤけた視界が次第に鮮明になる。
目に映る
息を切らしながら自分を支えるその姿に
思わず泣きそうになるのを堪え
さなは夏目の胸元に顔を埋めた。
「 なっ、・・・え、ど、どうしたんだ?
ど、どこか痛むのか?
着物、まだ苦しいのか・・・っ?」
飛び込むようにして、
されど控え目に
小さく抱き着くさなに
夏目が動揺を隠し切れないのは
無論、言うまでもなく。
手をふやふやと
上下に行ったり来たりさせ
アタフタとしながらもその身を案じる姿は
夏目らしく、
さなもそんな夏目に
今度は安堵の涙を堪え、
胸元に顔を埋めたまま
ギュッと夏目の着物の合わせを握り
ゆっくりと首を左右に振った。
「 ・・・もう、
駄目 かと、思った・・・
ここで終わりっ・・・て。
そしたら、夏目先輩も・・・
ここから、出られなく・・・なって
・・・
地上で
・・・止めてくれたのに
私が、
・・・行くって
言った、せいで・・・。
でも・・・
無事で、良かった・・・です。」
振り絞るようにして繋げる言葉。
泣きそうで、でも笑うさなが
顔を上げ夏目を見つめる。
「 ・・・さな」
思わずその名を口にして
その姿に愛おしく感じる夏目もまた微笑み
今度は優しくそっとその身を腕の中に包む。
「 あぁ、
間に合って良かった。
本当に・・・良かった、さな。
耐えてくれて、ありがとう。」