第16章 ◆雨乞儀式
「 そうです。
私が食していたのですよ。」
耳元から伝わる真実が
さなの呼吸をも速める。
「 そん、な・・・!
どうして、っ!」
思わず、
肩に乗せられる日照雨様の手を振り解き
振り返るさな。
「 ・・・え、?」
しかし、
さなが振り返った先に見る
日照雨様の狐面は
少し濡れていて、
時折
月明かりに照らされ
雫のように光っていた。
「 ・・・私が居なければ、
雲海下の梅雨が来ぬのです。
全て致し方の無い、事情なのですよ。」
先程までの声色が崩れたように変わる。
その日照雨様の姿は
まるで現状を悲観し嘆いているようで
さなは目を真ん丸くさせ
その姿を見詰めた。
「 日照雨様・・・」
さなが日照雨様を見上げ、
その名を呼べば
日照雨様は大きな自身の手を
ゆっくりとさなの頭へ乗せた。
「 貴女は、優しい。
・・・そして、強い。」
「 ・・・」
不器用な手付きでさなの頭を
撫でる日照雨様がポツリと呟く。
そして、
「 ・・・食べてしまうのは惜しい程に。」
その大きな手をさなの頭から
さなの顔を覆うように移動させた。
「 んぅ・・・ッ、!」
大きな手な故に
すっぽりと顔を覆われてしまうさな。
呼吸も出来ず、踠くものの
その手はビクともしない。
しかし
「 すまない、さな殿。」
何度目かの日照雨様の謝罪の言葉。
その言葉が聞えると同時に
すぅっとさなの意識が遠のく。
ー・・・ここで、気を失っては駄目・・・
なのに、・・・。
意識はしても踠いていた手が
がくん、と落ちる。
「 ・・・っ、」
ー・・・夏目先輩、
脳裏を過ぎるのは夏目の姿で、
「 なっ!!!」
何処か遠くで聞こえる、
日照雨様の叫び声。