第16章 ◆雨乞儀式
「 貴女には、もう少し
眠って頂きたいのです。
今回はさっきより深い眠り、
それも、
・・・痛みも分からない程に。」
月を眺めていた日照雨様の首が
ゆっくりとさなに向けられる。
「 それって、・・・一体
どういう・・・意味、ですか・・・?」
どくん、どくん、
さなの心臓は
更に音を立てて加速する。
きっと、
日照雨様と二人きりになってはいけない。
この場から逃げなければ・・・
根拠はないが
そう、第六感が判断すると
さなはまた
無意識に日照雨様から一歩、
ゆっくりと後退った。
「 どうもこうも・・・
分からぬのですか?
・・・ふふ。」
可笑しいとでも言うように笑う日照雨様。
次の瞬間、
さなの背後が揺れたと思えば
「 貴女を食す為です。」
さなの肩はがしりと掴まれ
耳元で囁かれる日照雨様の非道な言葉
「 ・・・っ!」
その日照雨様の言動に
さなの呼吸が一瞬止まる。
目の前の日照雨様は消えていて
今、背後に回り
確りと肩を掴まれ
動けない状況のさな。
「 わ、私を食べてしまえば
儀式を遂行出来ませんよ・・・?」
背後を確認する事は出来ないが
何とか振り絞った声は少し震えていた。
それでも
日照雨様の気持ちが変わる事を
願うさなだが・・・
「 えぇ、構いません。
私にはもう力が無い、
元々儀式が出来ぬ身なのですよ。
しかし、貴女程の妖力ならば
一年、いや、十年は持つでしょう。
今年ではなく、
来年より儀式を再開すれば良いだけの話。
・・・女狐妖だけでは、
一年と持たぬです。」
さなの願いは届かず、
少し寂しげな声色で
さなの耳元で囁くように話す日照雨様。
「 ・・・え、
・・・それじゃ、っ
他の嫁役の方は・・・
日照雨様、あなたが、・・・?!」