第16章 ◆雨乞儀式
「 もう、腹部の締め付けと
足の痛みは治りましたか?」
「 えっ?
ぁ、そういえば・・・」
日照雨様の優しい問い掛けに
さなは自身の帯に視線を下ろし
その上へ手を添えて確認する。
「 消えてる・・・。」
ゆっくりと帯の上に手を滑らす。
つい先程まで
歩くことも儘ならない程に締め付け
その足を止めていた痛みは
気付かない程に消滅していた。
「 それは、良かった。」
一瞬、日照雨様のふっと笑う声が聞こえ
さなが視線を上げれば
一歩下がった筈の目の前には
さなを見下ろす形で
日照雨様が立っていた。
「 貴女に、
苦しまれて力を失われては困るので
着物に掛けられた術は解きました。」
「 ・・・?
ありがとう、ございます・・・。」
日照雨様の言葉に
所々疑問符が浮かぶものの
さなは痛みを解消して貰えた事に
軽く頭を下げる。
そんなさなを見下ろしながら
ピクリとも反応しない日照雨様は
くるりと体を反転させて
さなと壺を挟む位置に
音も立てず移動した。
「 あの、
夏目先輩とニャンコ先生は・・・?
私だけ、どうしてここに?」
壺を挟んだ向こう、
月明かりに照らされ
暗い影でしか見えない日照雨様の背中に向かって
さなは分からない現状を問い質す。
「 お分かり頂けていると思いますが
此処は雨乞いの水を巻く間です。
急を要したので、
貴女だけ少し眠ってもらい
此処に連れてきました。
彼らは今、
・・・貴女を探すのに
必死になっている事でしょう。」
「 そんな、早く合流しないと、
逸れたら出られないんですよね・・・?」
日照雨様の言葉に思わず
その場を立ち去ろうとするさなだったが
「 ふふふ、
この期に及んで
他人の心配をするのですね。
人間とは本当に面白い。」
日照雨様の言葉がさなの足を止めた。
「 ・・・え?」
どくん、どくん、
と心臓が音を増し立てる。