第16章 ◆雨乞儀式
「 さな程の妖力の強さならば
喰えばアイツもかなり回復するだろう。
そうすれば男の夏目も喰いやすい。」
「 ・・・?!
男女の違いなんて、あるのか?」
駆け出した夏目を追うように
ニャンコ先生も走り真横につけば
ポロッと零す妖ならではの言葉。
その言葉に夏目が驚愕の目で
ニャンコ先生を見ながら問い掛ける。
「 見た目の問題だ。
肉の薄い骨張ったお前よりも
少し柔らかそうなさなの方が
美味しそうだろう。」
「 は、はぁ?!
そんな問題なのか?」
ニャンコ先生の見解に
思わず気の抜けた声を出す夏目は
縺れそうになった足元をなんとか支えて
微量に残った気配を辿る。
ー・・・まぁ、確かに、
さなが柔らかいのは当たっている・・・か。
ふと、抱き締めた時の
さなの感触を思い出し
何となく納得する夏目。
華奢な体型ではあるが
男子の夏目にはない女子特有の柔らかさを
さなが持ち得ているのは確かだった。
ー・・・って、何を考えてるんだ!
こんな時に。
己の思考を悔やみ
夏目は頭をブンブンと振って
目の前の事に意識を切り替えて
集中させたのだった。
「 ふん、阿呆め。
お前には私が用心棒として付いているから
力の無い日照雨には手が出せん。
それに人間の女が非力と云う事も
知っていたのだろうな。」
「 だから、先にさなを攫ったのか。」
険しくなる夏目の表情。
それは一刻を争う現状と
日照雨様の行動へのもの。
「 私と夏目が同行する事を許可したのも
さなを喰ってから喰うつもりだからだろう。
それだけ、
さなの妖力を過信しているのだ。」
「 それなら、尚更急がないと!」
ー・・・さな、
俺が行くまで無事でいてくれ!
少しペースを上げて走る夏目に
「 ・・・乗れ!夏目!」
ボワっとニャンコ先生が本来の姿に戻り
夏目の前へ伏せると
その身を乗せて飛び立った。