第16章 ◆雨乞儀式
「 ・・・っ」
社に入ってからさなに聞こえる
進むことに対しての否定の言葉。
日照雨様にしか聞こえない筈の社の言葉なのか
社に幽閉された女狐妖達の声なのか
はたまた別の妖の声なのか。
どちらちせよ、先程の会話から
この声が夏目とニャンコ先生には
聞こえていない事は事実である。
「 ・・・ぅッ。」
そして、さなが歩けば伴う
腹部の締め付けと足の痛み。
今は声もプラスされて気が遠くなる勢いだ。
「 日照雨様、?
水を撒く壺、の場所まで
時間は、大体・・・どのくらい掛かりますか?」
振り絞る様に言葉を掛けるさな。
短い深呼吸を挟みつつ、
言い切るさなだったが
「 凡そ、小一時間程・・・おや?
呼吸が乱れているようですね
休みましょうか?」
「 へ・・・?いや、大丈夫・・・」
「 さな、駄目だ休もう。」
「 今無理をしてもこの先もたんぞ。」
日照雨様の休息の提案に
何とか誤魔化そうと試みたさなだが
後ろの二人が半強制的に阻止する。
さなが不調を隠し必死に歩いていた事は
後ろの二人には丸分りだったようだ。
「 この先に夜風が抜ける間があります。
そこで休みましょう、歩けますか?」
「 ・・・はい、すみません。」
わかり易くシュンとなるさなに
日照雨様はクスリと笑う。
「 ・・・素直な方ですね。」
「 ごめんなさい、」
「 褒めているのですよ?」
「 ・・・ぁ、ありがとうございます。」
「 ふふふ。
人間は面白いのですね。
貴方が傍に居る気持ちも
分かる気が到します。」
「 ふん、私はただの暇潰しだ。」
穏やかな会話が終わる頃
日照雨様の言った通り
夜風が通る少し開けた間に辿り着いた。
「 っ、ハァハァ・・・」
壁に手を付き崩れるようにその場に座り込むさな。