第16章 ◆雨乞儀式
頭を下げる日照雨様の前で
ニャンコ先生は短く溜息をつき
夏目を見上げた。
「 ふん、胡散臭いと思った。
どうする夏目、帰るか?」
「 ・・・あぁ、」
「 探しましょう。」
ニャンコ先生と夏目の言葉を遮ったのは
その背後で静かに話を聞いていたさなだった。
「 さな・・・?」
その声に夏目が振り返れば
深く頷くさなの真剣な表情。
「 探す為に儀式を再開するんでしょう?
それなら、やり遂げないと。
折角ここまで連れてきてもらったんです。
出来る限り探しましょう。」
さなが夏目を見つめる。
その瞳に迷いは無く、力強い。
ー・・・参ったな。この目には弱いんだ。
本当ならば、さなの身を案じて
今すぐ下界へと戻るつもりだった夏目。
しかし、当の本人は
言っても聞かないだろう眼差しを
夏目に向けていた。
「 ・・・分かった、でも条件がある。」
はぁ、と一息溜息を零して
さなに微笑む夏目。
次いで、日照雨様に向かって
強目の声色で言葉を放った。
「 ・・・?」
日照雨様は深く頭だけ下げると
静かに夏目の言葉を待った。
「 俺とニャンコ先生も中に入れてくれ。」
「 なぬっ?!」
夏目の言葉に一際声を上げたのは
日照雨様の背後に立つ子狐妖だった。
「 な、何を申しますかな夏目様!
この社は神聖な場所・・・中に入るのは」
「 出来るのだろう?日照雨とやら。
雨乞いの神であるお前が 許 し た 者 ならば、
社に入れる筈だ。」
子狐妖の言葉も最早スルーされ
ニャンコ先生がじと目で日照雨様を見つめる。
「 ・・・分かりました。
お入りください。
しかし、呉れ呉れも私から離れぬ様
お願いします。」
夏目とニャンコ先生の眼差しに
日照雨様は観念したように
社に入ることを許した。
「 ありがとうございます。」
日照雨様の言葉にさなが
夏目と日照雨様両方に向かってふわっと微笑んだ。
微かな舌打ちを小さく聞きながら。