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†夏目友人帳† ​~新友人帳物語~

第16章 ◆雨乞儀式




「 ちゃんと、説明してくれ。」


夏目がさなを背後に隠すように

日照雨様の前に立つ。


その表情は険しく鋭い眼光で

目の前の日照雨様を捉えた。



「 えぇ、話しましょう。」


「 そっ日照雨様・・・!」


「 黙りなさい。

これより隠し切ることは不可能。


真実を述べ、儀式が遂行出来ぬとしても

それ以前に

ここ迄来て頂けた事に感謝しなさい。」



「 うぅ、失礼致しました・・・。」



日照雨様が夏目に近付けば

子狐妖がその間に入り最後まで制止の声を上げる。

・・・が、

低く通る日照雨様の声色が強調されると

その場に子狐妖は怯み、とぼとぼと

日照雨様の背後へと回った。





「 この雨乞儀式は

本来なら下界の梅雨の時期より前に行われる

毎年の風物詩とも云われる儀でした。


梅雨を前に

最後の光とも云わんばかりの

豪華絢爛の一行で社を拝礼し

生物全て蘇らせる程の清い水を天より注ぐ。

とても神聖な儀式と云われておりました。



しかし、二百年前

嫁役の女狐妖が社内で忽然と姿を消したのです。


社内は広く複雑、

一度逸れてしまえば

再会する事は容易い事では御座いません。

社に唯一入れる私が幾日も掛け探しましたが

気配すら残ってはおりませんでした。


いくら探そうにも見当たらず

結局儀式は中止、探すのを諦めて

出て来るのを待つ事にしましたが

子狐が言った通り、未だ出て来ず終いです。


それでも儀式を辞める訳にはいかぬので

毎年欠かさずに儀式を執り行いました。


そして数年後、又もや儀式最中に社内で

嫁役の女狐妖が姿を消したのです。

必死に探そうにも見つかってはおりません。


それからというもの、数年置きに

嫁役の女狐妖が姿を消しては

二度とその姿を見ることは無くなりました。


異様な事態では御座います。

嫁役の女狐妖も見知りがおらぬ訳では無い・・・、

姿を消して悲しむ者は数しれずおります。


今となっては曰く付きと云われるこの儀式。

辞める事も何度も考えました。


しかし、辞める前に

女狐妖をまた連れ戻したいのです。


社の中で寂しく彷徨く女狐妖と

悲しむその見知りの者達の為にも。


その協力を

人間であるさな殿に依頼したい。」



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