第16章 ◆雨乞儀式
「もし逸れたら
出られない、の・・・?」
険しい表情の夏目とニャンコ先生を
交互に見た後
さなは子狐妖へと向き直り
恐る恐る訊ねた。
「 はい、出られたお嫁様はおりません。」
「 それは、いつから・・・?」
「 長いお嫁様で、二百年ほど」
「 二百っ、?!」
「 なッ?!」
子狐妖から発せられた恐ろしい年月に
さなとともに夏目も声を上げる。
「 おい、
中ではどうなっている?
妖ならば生きている者も居るのではないか?」
目を見開くさなと夏目の前に
いつの間にか立っているニャンコ先生が
至極冷静に子狐妖へと言葉を向けた。
「 はて・・・、私も中には入れぬ身。
中の状態までは分かりかねます。」
子狐妖の答えは、答えにもならなかったが
ニャンコ先生は納得したように頷いていた。
「 ふむ、なるほどな。
指図目・・・
一度入れば出られぬ社
そのような噂が立ち
それで嫁候補の妖が来なくなったか。
そして本来なら妖で行う儀式を
噂を知らん人間であるさなに頼んだ訳だな。」
ニヤリと笑って
子狐妖に視線を送るニャンコ先生。
「 うぅ・・・。」
ニャンコ先生の視線を受け、
子狐妖は目を逸らすも狼狽える。
そして、
「 仰る通りで御座います。」
背後から低い声色が
その場に響き渡った。
「 そっ、
日照雨様・・・!」
さなと夏目とニャンコ先生が
振り返ればそこには
うつむき加減に立つ日照雨様。
ニャンコ先生の言葉に
観念したかのように肯定するその姿へ
子狐妖は飛び付くように制止の声を上げた。
「 騙すつもりは御座いませんでした。」
足元で騒ぐ子狐妖の制止も
已にも返さず話し始める日照雨様。