第16章 ◆雨乞儀式
社までの道程で作った列と
殆ど同じように再度また列を作り
何百もある蝋燭で照らされる
豪勢な社の入り口を潜る一行。
入り口を抜けると目の前には
緩やかな階段が続いており、
先程よりも少し早めの速度で進む。
「クゥ・・・
ぇ、エスカレーターとやらは
無いのか・・・?」
「御座いません。
静かにお進み下さい。」
夏目から降ろされたニャンコ先生が
文句を垂らすも子狐妖にピシャリと
言い切られ流されるというやりとりが
数回続いた後、
十分程かけて登り切った一行。
「なんと、立派なものだ。」
「大きなお社ですね。」
「あぁ、」
ラストスパートをかけて一番最初に
階段を登り切ったニャンコ先生に続いて
社の佇まいに声を上げるさなと夏目。
やっとの思いで辿り着いた社は
入り口同様、何百もの蝋燭に照らされ
老朽はしていないものの
古びた佇まいではあるが
綺麗に保たれており、
その大きさは
初見の者は誰もが目を奪われる程に幅広い。
「 さて
日照雨様、さな様。」
さなと夏目が社に見蕩れていると
そっと子狐妖の声がかかる。
「これよりお二人には
社の中へと入っていただき
中にあります壺の水を
お二人で外へと撒いて頂きます。」
「はい。」
子狐妖の説明にさなは耳を傾け、
「中にはお二人しか入れませんので
さな様、くれぐれも
日照雨様から離れぬようお願いします。」
そして、耳を疑った。
「え?
離れるって・・・、
そんな場所にあるの?」
目を丸くさせるさなの横で
夏目もニャンコ先生も表情が険しくなる。
「 ・・・えぇ、中は広く複雑な構造ですし。
この社は・・・生きております。
意思がある故に
日照雨様にしか道導を示さないのです。
ごく稀に逸れる方がいらっしゃるのですが
そうなれば儀式は中止、
逸れたお嫁様は外へ出る事は不可能となります。
気を引き締めて、お願い致します。」
サラッと説明を終える子狐妖の前で
無言で顔を見合わせる三人だった。